第4章 ピアノレッスン~シド~
ふうっと、軽くため息をつき………もう一度弾こうとした、その時―――。
コン、コン。
小さなノックとともにドアが開き、ルイが思いつめた表情で入ってくる。
「あ、ルイ。公務?忙しかったの?」
「マイン」
「ん?」
どうしたんだろう………。
硬い表情のルイ。
「レッスンは、もうおしまいにしよう」
「………へ?」
唐突なルイの言葉に、おかしな声を上げてしまう。
「2人で練習しない方がいいと思う。君のためにも………俺のためにも」
「………」
「後は、お互い別々に練習しておこう」
「………え、なんで?もうすぐ音楽祭だよ?これからこそ2人で合わせていかないと、なのに」
「ごめん、俺は無理」
「………あ、え?無理って………なんで?」
頭の中は、ハテナ状態。
唐突なルイのこの言葉に、思わず首を傾げる。
無理って………。
目を瞬かせて、次のルイの反応を待つ。
「じゃ」
短く言うと、部屋を出て行こうとする。
「じゃ、って………帰っちゃうの?ルイ?」
私の呼び止めに振り向きもせず、去って行ってしまった。
1人取り残されて、ただ、ドアの方を見やっていた。
………ルイったら、どうしちゃったんだろう。
公務が忙しくなって、時間が取れないって言いたかったのかな。
だから、別々に練習しようって言い出したのかな。
そう思おうとするけど、なんとなく腑に落ちない。
………何か、あったのかな。
でも、まあ、お互い、もうかなり弾きこなしているから………大丈夫、かな。
気を取り直して、またピアノに向かう。