第4章 ピアノレッスン~シド~
~迷い~
陽も傾き始めた、夕刻。
その日も、いつものようにピアノ室でのレッスンだった。
いつもならルイの方が先に来ていてピアノを弾き始めているのに、今日は珍しく私の方が早かった。
公務で遅れてるのかな。
ピアノの前に腰掛け、ゆっくりとメロディーを奏でる。
元々私の方が先に練習していて、だいたいは弾けていたので、私がルイに教える形であったのに、いつの間にかルイの方が上達していて、私は、すっかり遅れをとっていた。
いつも、つまづいてしまう箇所………ルイに引き込まれて戸惑ってしまう箇所を、繰り返し弾く。
――――1人で弾いてる時は、大丈夫なんだけどな。
この箇所に差し掛かったら、1人で演奏してるつもりで弾いたら、うまくいくのかな………。
けど。
やっぱり、ルイのメロディーをよく聴いて、ハーモニーを奏でたい。
とても素敵な旋律だから。
お互いが溶け込むような、そんな情熱的な場面だから………。