第4章 ピアノレッスン~シド~
ピアノ室に向かっていると、曲がり角からやって来た人物に声をかけられる。
「マイン」
「ルイ!久しぶり」
ここで、ルイに会うという事は………。
「ルイが、パートナー引き受けてくれたんだね。忙しいのに、ありがとう」
状況に気づいて、先にお礼を言う。
「大丈夫、気にしないで」
ルイが、静かに微笑む。
そんなルイの表情を見て、ほっとする。
そして、思った。
―――最初からルイに頼んでいれば、良かったんだ………。
ピアノの前の長椅子に2人で腰掛けると、距離が近すぎて落ち着かない。
そんな私の様子をルイが察したようで………。
「ごめん、普通の椅子2つ借りて来ようか?弾きづらいよね?」
そう言って立ち上がろうとするルイに、慌てる。
「ううん、大丈夫。この曲、お互いの音近いから、この方が弾きやすいはず」
ルイの分の楽譜を手渡す。
じっと楽譜を見つめるルイの、伏し目がちの瞳と長いまつ毛に目を奪われる。
なんて、綺麗なんだろう………。
「聞いてはいたけど、難しそうな曲だね」
と、ルイが不意に顔を上げてそう言う。
「え、えっと………あ、うん、そうなんだよね」
見つめていた事に気づかれてはいないかドキドキしながら答える。
「とりあえず弾いてみようか」
こうして、私とルイは、レッスンを重ねていった。