第4章 ピアノレッスン~シド~
~看過~
「マイン様、ジル様からの言付けで、午後は予定変更でピアノ室へって」
ユーリが昼食の給仕をしながら、そう言う。
「ピアノ室?」
それって、午後からピアノのレッスンって事だよね。
昨日の今日で、シドの気が変わったとは思えない。
けど、もしかして………。
すぐ横でお茶を注いでくれているユーリに、小さく尋ねる。
「あの………シドは、お城に来てるの?」
「え、シド?う~ん、今日は見かけてないし、そんな予定ないと思うけど」
「そっか………」
私は、肩を落とす。
「シドに何か用事?伝えておこうか?あ、なんなら、ジル様にもお願いしておくけど?」
そんな私の様子を気にかけて、そう提案してくれるユーリ。
「う、ううんっ、いいの!」
慌てて言う。
シドに用事………そんなものない。
彼に仕事を依頼する事はない。
私を訪ねて来る事もない。
次にいつ逢えるかも分からない―――。
最近の私は、どうかしてる。
気づけば、シドの事ばかり考えている。
そんな時、決まって、胸の奥がギュッと掴まれるような苦しさを覚える。
そして、また―――。
考えを振り払うかのごとく、首を横に振って………。
考えるのは、よそう。
シドに対する、この訳の分からない感情を、追求したくはなかった。
それを知るのも、認めるのも、怖いと思うから―――。