第4章 ピアノレッスン~シド~
「………」
マインが言いかけて、言わずにいた何かがある事には気づいていたシド。
「聞いてねえな」
「そうですか」
そう言って、目を伏せるジル。
「なんだ、その態度は………お前もアイツから何も聞いてねえのかよ?」
「ええ。まったく聞かされておりません。ですが………彼女が、あなたを指名した理由を知りたいとは思いませんか?」
「あ?興味ねえ」
めんどくさそうにそう答えるシドに、ジルは眉をひそめる。
「本当に、それでよろしいのですか?」
「よろしいも何も、俺には関係ねえ」
「大事なものから目を逸らすのは、どうかと思いますが………」
「大事なもん?それが、アイツだって言いたいのか?ずいぶん勝手な解釈だな。近づけば離れろだの、離れりゃ傍にいてやれだの言いやがって。ったく、やってられっか」
シドは語気を荒げる。
それは、まるで本心を隠そうとするかのごとく―――。
「では、パートナーをハワード卿にお願いしても、かまわないのですね?」
「最初っからそうしてりゃ、何の問題もなかったんだろが………。いいか、次からくだらねえ呼び出ししやがったら割増し料金請求すっからな」
シドが去った後、ジルはまた、深くため息をついた………。