第4章 ピアノレッスン~シド~
~ジルとシド~
コ、コンッ。
ノックの音がしたかと思うと、返事を待たずに乱暴にドアを開け、部屋へと入って来る人物。
「………人の部屋に入って来るのに、礼儀があるのでは?」
机に向かっていたジルは、険しい表情をノックの主に向ける。
「ノックは、した」
ノックの主―――シドは、ズカズカとジルの側に近づき、机にバンッと手をつく。
「俺を、つまんねえ用件で呼びつけるな」
「………ピアノレッスンの事ですか?」
「それ以外に何がある」
ジルは、ふっとため息をつき、書類を束ねがら立ち上がり、腕組みをする。
「プリンセスのご指名だったもので」
「ご指名、ね。密室で男と女が2人きりで、何も起こらねえとでも思うか?大事なプリンセスがどんな目に遭ってもかまわねえってのか?教育係様よぉ」
「シド」
たしなめるには、鋭すぎるジルの口調。
「………冗談だ」
言い過ぎたと思ったシドは、そう返す。
「とにかく、断る」
そう言って、部屋を出ようとするシドの背中に、告げるジル。
「あなたを指名した理由をご存知で?」
「あ?」
「プリンセスから、何か聞いておりますか?」