第24章 私立リアリン学園!8時間目~ルイ~
音楽室に向かう廊下を歩いていると、かすかに聞こえる、ピアノの旋律。
誰かがピアノを弾いてるようだ。
音は歩いていく度に近く、はっきりと聞こえるようになっていった。
音楽室から聞こえる、優しく、儚い夢のようなウットリとするような音色―――。
ドアの真ん中には、薄い曇りガラスが、はめられている。
そこから中を覗いてみるけれど、中の様子まで見ることができない。
仕方なく、そっと、ドアを細く開けて、中を覗き見る。
―――ルイ。
ピアノの前に座っているのは、ルイだった。
優雅な仕草で鍵盤を叩くその姿は、あまりにも神々しくて、思わず息を呑んでしまう。
「誰」
ピタリとピアノが鳴り止む。
あ………っと。
ルイと目が合う。
どこまでも優美な姿に見とれてしまっていて、すぐには声が出なかった。
「何?」
「ルイは、本当にピアノ上手だね」
私は、素直に思ったことを口にする。
「………」
「あ、ごめんね。邪魔しちゃって」
思いのほか冷たい表情のルイに気づいて、慌てて謝る。
「それで?マイン先生は、どうして音楽室に来たの?」
「え?」
ルイに聞かれて、ここに来た本来の目的は何だったか思い出した。
「これ、取りに来たんだよね?」
ルイが自由曲の楽譜の束を手に取る。
「あ、うん、そうなの。私、忘れちゃって」
「俺が片付けておくから」
「え、でも」
ルイは、それ以上何も言わずに立ち上がると、すっと私の前を通り過ぎ、振り返ることもなく音楽室を出て行ってしまった。
なんか………少しは親しくなれたと思ったのは、気のせいだったのかな。
やっぱりルイは、冷たくて。
誰とでも距離を取ろうとして。
………それは、私でも同じなんだね。
心がシュンとしぼんでしまったように、残念な気持ちでいっぱいになった。