第4章 ピアノレッスン~シド~
「………交渉決裂だな。他、あたれよ」
シドは、背を向けて、部屋を出ていこうとする。
「………っ、待って!」
慌てて、後を追う。
「なんで?こんなに頼んでも、ダメ?」
シドの腕をとっさに掴んで、引き止める。
「んな、公の場で演奏とか、ガラじゃねえからな。それに、お前のピアノレッスン受けるほど、俺は、暇じゃねえ」
それだけ言うと、シドは私の手をやんわりと引き剥がし、部屋を出て行った。
力なくピアノの前の長椅子に腰掛けて………。
予想は、していたけど。
もしかしたらって………そう、思ってた自分がいた。
『アイツなら、お前の頼み、喜んで聞いてくれんだろ』
シドの言葉が、頭の中で、リフレインする。
シドもそうであってほしいと、密かに思っていた。
シドとのピアノレッスンを、どこかで期待していた。
けど………やっぱり、ダメだった。
淡い思いは、見事に砕け散って。
力なく肩を落とした―――。