第1章 皆でお祝い♪ ゼノ様バースデー!
そして、ゼノ様は、続けて語ってくれたのだった。
『だが、ニシンの骨が喉に刺さってな………苦しかったのだが、母の嬉しそうな顔を見ていたら、言い出せなかった』
驚いて目を見開く。
魚の骨が刺さるって………子どもだったゼノ様にとって、相当な痛さだったと思うけど。
『それで、どうなさったのですか?』
『そのままこらえて、完食した』
ゼノ様は、当時の事を思い出したのか、少々苦い顔を見せる。
『だから、魚がお嫌いになったのですね?』
『骨が、な』
思いがけない話が聞けて、ゼノ様をカワイイと思ってしまい、つい笑みがこぼれてしまう。
『おかしいか?』
『いえっ………あ、では、これからは、私が骨を取ってさしあげます!』
『………何?お前が骨を取ってくれるだと?それならば、いただこう』
そう言ったゼノ様は、柔らかい笑顔を浮かべていて………。
「………様、………マイン様~~、マイン様ってば!」
ユーリの声に、はっと我に返る。
「ぼーっとしちゃって、大丈夫?疲れちゃった?」
心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
ち、近いっ………。
「………だ、大丈夫だよ」
「さては~~、ゼノ様の事でも考えてた?」
いたずらっぽい眼差しで、ユーリが言う。
「………っ、そ、そんなんじゃっ………!」
慌てて否定するけども………。
そのとおりだし………。
いけない、いけない。
料理に集中っと!
えっと、どこまで進んでたっけ………。
出来上がった具材を、手元の楕円形の大きめの耐熱皿に、急いで敷き詰め始める。