第21章 私立リアリン学園!7時間目~カイン~
「何がわからないの?」
私は、正面から身を乗り出して、本を覗く。
「新古今和歌集は、現代の連歌とか俳諧につながってるから、理解しやすいと思うんだ。それに、ジャンルごとにまとまってるから読みやすいし。今回の論文のテーマからすると恋歌から選ぶのがいいかな」
「そういうのが嫌なんだよ」
「嫌って?」
「和歌に想いを託すってのが気に入らねえ。好きなら好きってストレートに言えばいいだろが。なにも婉曲する必要ねえだろ」
「………その言葉、そっくりそのままカインに返すよ」
「はあ?」
「湾曲しないでストレートに、でしょ。じゃあ、生徒総会の準備に専念するからサッカー部の練習に出られないって言えば?アルバートにだって、一人で大変だろうから手伝うよって普通に言えばいいじゃん」
「お前、それ………」
「皆の前で、メイドカフェのことバラしたのだって、何か意図があるんだよね?ただ、からかうためだけに持ち出したんじゃないでしょ」
私は、確信めいていた。
カインは、理由なく人を傷つけるようなことはしない。
からかったり、卑しめたりするけれど、その裏には思いやりがあって………。
私は、フツフツと湧き上がった感情を押さえることができなくなってしまった。
心の中にあった思いをすべて口にして―――。
フウッと、息をつく。