第3章 ピアノレッスン~イケヴァン・モーツァルト~ 情熱編
「動くよ」
ゆっくりと、律動が始まる。
深く、深く………そして、時に浅く………。
その度に快感で、身体が震える。
ふと、頭の片隅で、先ほどの二重奏の旋律が奏でられる。
初めて会った時に聴いた、モー君のピアノ。
彼の作った曲は、繊細な見た目に反して、力強く情熱的で。
心を揺さぶられた―――。
孤独で冷たい、すべてが無意味に思えるような、悲しい前奏。
そんなセコンドとは、まったく趣の違う、明るく無邪気な心躍るような、プリモ。
交わることがない、必要ない………そんな思いで、一貫性を保とうとするセコンド。
天真爛漫に、飛び込むかのごとく、どこまでもまっすぐな、プリモのメロディーが高まっていき………。
お互いに近づこうとして、やめる。
戸惑い、また歩みよろうとする。
そして………お互いが、お互いのままを欲し、求め………。
やがて、重なり、共鳴する。
巧みな和音が、心にしみいる―――。
クッチュ、クッチュ。
律動とともに結合部から響く水音に、興奮がどんどんと高められていく―――。
並んで弾いた、あの曲。
交差する手と手。
感じる、思い。
どうして二重奏曲にしたのか、なぜプリモが必要か、わかった気がする―――。
私達は、言葉がなくても、伝わっている。
感じ取っているのだ。
「ああっ………いい、すご………ん、あっ、あ、あ、あん、ん、ぁ~~~ん………!」
最奥を激しく突かれ、あられもない声が、とめどなく溢れていく。
「ん………俺も、もう、限界………」
切羽詰まった声音。
更に加速する、律動。
再び、訪れる快感の嵐に、身体の震えが止まらなくて―――。