第3章 ピアノレッスン~イケヴァン・モーツァルト~ 情熱編
ウィスタリアに戻ると、不在中に溜まった書類や公務に追われ、また忙しい日々が始まった。
公務の合い間や休憩時間になると、私はピアノに向かった。
モー君を想いながら。
次に逢う日を指折り数えながら………。
楽譜に書かれている旋律を指でなぞる。
美しく並ぶ音符達が、繊細で優雅な物語を刻んでいる―――。
―――と、別れ際のモー君の言葉が思い浮かんでくる。
『楽譜、完成したら送る。だから、今度は、マインがプリモを弾いて。また、君と弾きたい』
そうして、私達は、約束のキスを交わした―――。