第20章 私立リアリン学園!~ゼノ~ 情熱編
しばらくの沈黙ののち………。
「満足か?」
私の顔を覗きこみ、笑みを浮かべる。
ゼノ様が、私の額を撫でる。
「その顔もいいな」
汗で貼りついた私の前髪をかき分けながら、また笑う。
穏やかな微笑みを見ていると、私もつられて笑顔になる。
「ゼノ様の、その優しい表情が好きです」
思ったことをそのまま言葉にすると、ゼノ様は少し驚いたような顔をして言った。
「俺は、そんなに優しい顔をしているのか?」
「はい」
「そうか」
私は、満ち足りた幸せを噛みしめていた。
ゼノ様は、ゆっくりと私の隣りに横たわる。
「俺は、学園を卒業の後、シュタインの国王となる」
「………?」
「生徒とこのような関係だと知られたら、マインも困るだろう。これからの一年は、先生として、そばにいてくれないか」
………先生として、か。
私は、急に現実を突きつけられた気がした。
そうだ、ゼノ様は、時期国王。
卒業したら、私なんか手の届かないところにいる人なんだ。
甘い時間は、いっときの出来事に過ぎなかった。
当然のことだけど―――。
今、こうして、こんなに近くにいるのに………。
ゼノ様は、上を見上げている。
それは、遠い未来を見据えようとしているかのようだ。
私も天井を仰ぎ見るけれど、こらえきれずに目を閉じる。
………泣いては、ダメ。
そう自分に言い聞かせるけれど。
涙が、溢れそうだ―――。