第19章 私立リアリン学園!6時間目~ゼノ~
「私にも………わかりません」
心をギュッとつかまれたかのような、苦しい感覚に包まれ、しぼり出すように、そう言うと―――。
ゼノ様の手が、静かに頬を滑って、やがて離れていった。
「そうか」
ゼノ様は、喉を鳴らしてコーヒーを飲み干す。
「そろそろ戻ろう」
そう言って、歩き出す。
それにならって、私も後についていく。
追いつこうと足を速めて―――。
はっとして、歩速を緩める。
ゼノ様の背中。
手を伸ばせば、触れる距離にいる―――。
けれど………。
伸ばしかけた手を止め、ギュッと握り締める。
私と、ゼノ様。
こうして、距離を保ったままで―――。
せつないため息が、誰にも知られることなく、夜の闇に吸い込まれていった。
※次ページより、情熱編<R18>となります