第19章 私立リアリン学園!6時間目~ゼノ~
「おかしいか?こういうのをなんて言う?マザコン、か」
ゼノ様の口からマザコン、なんて言葉が出てくるとは思ってなかった。
照れ隠しに、あえてそんなことを言ってるのだろうな………。
「そんなことないです。お母様の唯一の形見なんですよね?大事に持っているのを、おかしいなんて思いません」
私は、つい、必死になって強い口調になる。
「いつも財布に挟んだままで、気にもとめていなかった。存在さえ忘れていたくらいだ。あのメモを落としたことなど、今まで一度もなかった。それなのに」
そこで、ゼノ様は言葉を切って。
私に向き直る。
「あのメモが、マイン先生に引き逢わせたのだろうか」
「………!!」
「母が言っていた。出逢いを大切にしろと。今なら、よくわかる」
ゼノ様の手が、私の頬に触れる―――。
「泣いている時は、涙を拭おう。困っている時は、力になる………俺は、マイン先生の笑っている顔を見ていたいのだ」
「………」
私は、どう答えていいのかわからず、ただ、ゼノ様を見つめ返す。
「誰かの表情がこんなにも気になることなど、今までなかった………気づけば、いつのまにかマイン先生のことばかり考えている。頭から離れない………この感情は、なんというのだ?」
「それは………」
私は、答えようと口を開こうとして―――。
唇をキュッと引き結び、俯く。
それは、その感情は―――。