第19章 私立リアリン学園!6時間目~ゼノ~
ふうっ。
「紅茶が好きなのか?」
「はい、実は私、コーヒー飲めないんで」
「なぜだ?」
「苦いから」
ゼノ様は、私の答えに一瞬目を丸くして。
次の瞬間、柔らかい笑顔になる。
「ずいぶん子どもっぽい理由だな」
「子どもの頃から、そうなんです!」
「そうか。しかし、あの時はコーヒーを飲んでいたのでは?ミルクティーより濃かったように思うが」
「あの時?………って、いつですか?」
「初めて逢った時だ」
ああ―――。
ゼノ様と初めて逢った、夏休みのカフェ。
「あの時は、ココアでした」
「ココアか」
そんなことまで覚えているなんて………。
でも。
私も、あの時のことは、一つ残らず覚えている。
小さなメモが、私のすぐ足元に落ちて。
ゼノ様に渡そうとしたら、アルバートに遮られて………。
「あのメモに書かれていたのは、ゼノ様の国の文字ですか?」
「………あれは、母の国のだ。もっとも、消滅してしまったので今は誰もあの文字を使う者はいない」
「そうだったんですね。なんて書いてあったのですか?」
「ただの走り書きだ………しかし、あれしか母の物は残っていないので大事に持っている」
………。
その言葉で、ゼノ様のお母様は、もうこの世にはいないのだと悟る。