第19章 私立リアリン学園!6時間目~ゼノ~
私は、玄関に回り、外にでる。
穏やかな夜の匂い―――。
時折、吹く強い風に髪を持っていかれる。
寒さは感じないけど、確実に秋の気配が漂っている。
虫の声が遠くで聞こえてくる。
澄んだ音色―――。
おっと。
………それより。
確か、人影が見えたのは、この辺りだったはず―――。
キョロキョロと辺りを見渡して見るけれど、誰もいない。
私の足音を聞いて隠れたとか?
「コラッ!出てきなさい!」
私が、大声を上げると。
ガサガサと茂みが音を立てて………。
黒い影が、こちらに姿を現した。
「ゼノ様!?」
「勝手に外に出て、すまない」
「あ、や、いえっ、いいんです、そんな………」
まさか、ゼノ様だとはっ!!
私、コラッ、なんて言っちゃったよぉ。
………どうしよ、どうしよ~~っ。
一人でワタワタとして、立ち尽くしていると………。
「もう少し、こっちに来ないか」
ゼノ様に言われて。
おずおずと、近くへ行く。
いつもの制服姿とは全く違う、ラフな白いTシャツ姿のゼノ様にドキドキしてしまう………。
「あの、ここで何をしているんですか?」
「星を見ていた」
「星?」
私は、空を仰ぐ。
わっ。
満天の星―――。
真っ黒な空に瞬いている、小さな光の数々。
月は薄い眉毛の形で、ほんのり照らしているだけなので、余計に輝きが引き立つ。
………綺麗。
こんなふうに夜空を見上げたことって、最近あったっけ―――。
毎日が忙しく、慌ただしく過ぎて行って。
こうして、立ち止まることを忘れていた。
なんだか、心が洗われるなあ。