第19章 私立リアリン学園!6時間目~ゼノ~
歩き出すと。
じんわりと目に涙が浮かんでくる。
私、もしかして、一人で浮かれすぎちゃった?
………自分が情けない。
二人きりで、それだけでなんだか特別な感じがしていて。
ゼノ様は、すごい人だけど。
そんな人と私は普通にお話する仲になってるって勝手に思っちゃってて。
ゼノ様が写真を覗き込んで、話してくれたから、私は調子に乗っていたけど。
―――でも、あれは、私に合わせてたんだよね。
ゼノ様は、気を使って、答えてくれただけだったのに。
私ったら、なにを勘違いしていたんだろう………。
「マイン先生?」
少し驚いたような、低い声が聞こえて、顔をあげる。
向こうから、アルバートがこちらに向かって歩いて来るのが目に入った。
「今日は、生徒会はありませんが、なにか………」
そう言うと、アルバートはメガネの端をクイッと上げて、鋭い目つきで私を見る。
「なっ………、泣いていたのですか?」
「あっ、ううん。これは、目にゴミが入って」
私は、よくある言い訳をする。
「そうですか。大丈夫ですか?」
「うん。もう平気。アルバートは、生徒会室に行くの?」
「ええ。ゼノ様の仕事を手伝うので。もう、ゼノ様はいらしてますか?」
ゼノ様、か………。
「多分………」
「多分?なぜそのような推測的な物言いなのですか。マイン先生は、今まで生徒会室にいたんですよね?」
「えっと………そうだけど」
「では、ゼノ様が生徒会室にいるかいないか正確に答えられるはずでしょう?」
「………わかんない!」
アルバートの責めるような言い方にムッときて。
私は、さっさと歩き出した。
「………ますます奇怪だ」
アルバートの呟きが耳に入ってきたけれど。
もう私は、自分でも何がなんだかわからなくなってきて、振り向くことなく、その場を後にした。