第11章 私立リアリン学園!2時間目~ノア~
「物思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 袖うちふりし 心知りきや」
ノアは、私の膝に顔をうずめたまま、静かに呟く。
それは、源氏物語第七帖『紅葉賀』で、光源氏が藤壺の宮へ贈った和歌だった。
あなたを想い、舞うこともやっとという私の心をご存知でしょうか。あなたへと振る袖の心を知らないわけではないでしょう―――。
袖を振るとは、万葉の昔から愛の表現とされている。
それって………。
『藤壺の宮って、マイン先生みたいじゃない?』
以前のノアの言葉を思い出す。
『じゃ、俺が光源氏ね』
私が藤壺の宮で、ノアが光源氏―――。
ノアは、私への気持ちを源氏物語になぞっていたのだ。
今になって、ノアの気持ちに気づいた。
………いろんなことが、つながっていく。
『俺、マイン先生に会ったことある』
『あれからすぐ、辞めちゃったんだね。もう一度会えたらってずっと思ってた』
話題がそれたのかと、あの時は思ったけど。
初めて会った時から、ノアは私を想っていて。
それを伝えようとしていたのに。
私のメイドカフェの頃を知っていたことに動揺してしまって、それどころじゃなくて………。
ノアのことだから、源氏物語も一度読んだだけで、覚えてしまったのかも。
そうかと思えば、子どもみたいなとこもあって。
………こんなに大きいのに―――。
「五分だけ、こーしててもいい?」
そう言われて。
それくらいなら―――。
五分だけ、このまま過ごすことにしよう………。
※次ページより、情熱編<R18>となります