第11章 私立リアリン学園!2時間目~ノア~
「同じほど、それより下臈の更衣たちは、 まして安からず、朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いと篤しくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、 いよいよあかずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえはばからせたまはず、世のためしにもなりぬべき御もてなしなり」
突然、ノアがスラスラと源氏物語を朗読し始めた。
………え、えっ?
私は、驚いて足を止める。
そんな私を少し先を行ったノアが、振り返る。
「続き、読んでって言ったよね」
先週の古典の授業のことを言っているのだろう。
確かに寝ているノアに続きを読むように言った。
そして、今、ノアが朗読したのは、私が授業の時、朗読し終えた箇所からだった。
「こないだは、授業中断させちゃってごめんね」
………悪いことしたなと思っていたのかな。
だから、一生懸命読んで、暗記してきてくれたんだろう。
そんなノアの思いを感じて、私は、すごく嬉しくなった。
「ううん、もういいよ。それより、暗記したの?すごいね」
また、二人並んで歩き出す。
「どんなかなーと思って読んでみたら意外と面白くて、図書館で借りて、つい、一気に全部読んじゃった」
「え、全部?」
全部って………源氏物語って、確か、原稿用紙に換算すると二千枚は超えるはず。
「最初から、最後まで?」
「うん、最初から最後まで。原文で読んで後から現代語訳も読んだ。やっぱり原文の方が風情があっていいね」
「………」
さらっと、すごいこと言ってるんだけど………。
この一週間は、ずっと源氏物語づくしだったのかな。