第1章 皆でお祝い♪ ゼノ様バースデー!
皆でひととおり飾りつけを説明し終えた後、ゼノ様に椅子を勧め、私もすぐ隣りに座る。
「何か召し上がります?」
私は、取り皿を手にする。
「そうだな。あれは………ニシンのパイか?」
魚をかたどったパイ生地が、いい焼き色をつけて、香ばしい匂いをさせている。
「はい。お口に合うかどうか………。お母様の味にはかないませんが、懐かしく思っていただけたら、と思って」
私は、はにかみながら、パイを切り分ける。
「どうぞ」
パイの乗ったお皿を、ゼノ様の前に静かに置く。
「食べさせてくれるのではないのか?」
ゼノ様はフォークを手にすると、そのフォークを私に差し出す。
「え………」
「お前が、骨を取ってくれるのではなかったか?」
ゼノ様が口の端に笑みを浮かべながら、じっと私を見つめる。
「あ、あの、骨は、調理前にしっかり取り除いてありますので………安心してくださいっ」
しどろもどろにそう答えると。
「そうか、では、いただこう」
そう言いながら、ゼノ様は、私の手にフォークを握らせて―――。
そのまま、私の手を掴み、フォークでパイをすくい、口に運ぶ。
―――っ!
私は、あまりの恥ずかしさに、顔が一気に熱くなっていく。
思わず、ユーリとアルバートの方を見やると………。
2人は明らかに不自然に、私達から視線を逸らしている。
恥ずかしいけれど、この何とも言えない距離感が、妙に安心する。
こうして、ゼノ様の誕生日パーティーは和やかに過ぎていった―――。