第5章 私立リアリン学園!序章
「おい、レオナルド、もう一杯おかわりもらえるか」
カウンター席に座っているさっきのハットの彼が、空になったグラスを手に、バーテンダーに声をかける。
あの人の名前………レオナルドって、言うんだ。
「レオナルドって………あの人が、オーナーだよ」
私の心の声と重なるように、結衣が小声で言う。
え、あの人、ただのバーテンダーじゃなくて、オーナーなんだ!
「今日は、ペース早いんじゃねえか?」
ハットの彼からグラスを受け取りながら、レオナルドさんが言う。
………あの人達は、常連さんなのかな。
親しそう。
と。
レオナルドさんと目が合い―――。
一瞬、笑顔を向けられる。
でも、すぐにお酒を作り始めて………。
気のせい、じゃないよね。
確かに、こっち、見た………。
なんだか恥ずかしくなってきて、グラスに視線を落とす。
「ん?ん?なんかあった?」
結衣が、わざとらしくレオナルドさんと私を交互に見ながら、私の顔をグッと覗き込む。
ご、ごまかしきれそうにないっ………。
「別に、なんもないけど………ただ、お店入ったら、つっ立ってないで座れって言われて。敬語じゃないんだって驚いて。誰にでも気さくな人なのかなって」
答えになってるのかどうなのか自分でもわからないまま、しどろもどろでそう言う。
「ははっ、そんなこと言われたの?おもしろっ」
そして、結衣が、私のグラスを指差す。
「マイン、ビールなの?ここ来たら、ルージュかブラン飲まなきゃあ」
「………何?」
結衣が、メニューを差し出す。
シンプルなメニューには、お酒の名前がずらりと並んでいて、『ルージュ』、『ブラン』という文字が真っ先に目に入った。
一番上に書かれているのだから、もちろんここのオススメなんだろうな。