第1章 1
時刻は朝の5時。
俺は地図を頭の中で広げながら、軽くパニックになっている恵梨が、少しでも落ち着いて運転出来る道を考え、指示を出している。
「次はー・・・2つ先の信号を右な」
「・・・はい」
「手前から2台、来るで。アレが行ってから曲がろか」
「・・・はい」
「そしたら3つ先の角を左に」
「・・・はい」
恵梨は、まだガチガチに緊張したままや。
でも、車を動かし始めた時よりはかなり上手くなったと思う。
「恵梨、えらい上手なったやん」
「本当ですか?」
俺が声をかけると、恵梨は嬉しそうに聞き返した。
それから赤信号で車を停めると、バッグの中からCDプレーヤーを取り出した。
「それなら・・・BGM、流しても良いですか?」
信号はまだ赤のまま。
恵梨はニコニコと笑いながら、プレーヤーからCDを取り出すと、カーオーディオに差し込んだ。
カーオーディオがCDを読み取る。
そして流れてきた曲には、聞き覚えが・・・
「んん??『FREEDOM』??」
「はい!!『SINGLES2』の特典DVDを見てから、いつか『FREEDOM』を聞きながらドライブしたいなーって、ずっと考えていたんです」
「・・・へぇ」
「車を運転しているshujiさん、スゴいカッコ良かったです。私もこんな風に運転出来るようになれたら良いな・・・って、思ったんですよ」
・・・そう言われて悪い気はせん。
俺は外を眺めながら、少しだけ笑みをこぼした。