第1章 1
恵梨が何度か瞬きをしてから、一歩足を踏み出して叫ぶ。
「ドライブって・・・い、今からですか!?」
「決まっとるやん、今からや」
「こんな朝っぱらからですか!?」
「せやな。道路も空いとるし、えぇやん」
「だって・・・今日はスタジオに・・・」
レコーディングやジャケ写の撮影やら、一通りの作業が終わっても、『製品』として曲を世に出すにはまだまだ手を加えなければならない。
今日は確認と手直しの為に、yasuとyou以外のメンバーは10時にスタジオ集合の予定が入っとる。
「せやから、今から行って10時にスタジオに行くんや」
「・・・・・・」
恵梨はボーッと立っている。
口は相変わらず開いたままやし、寝癖もついたままや。
────いつも『出来るだけ完璧に』というモットーに沿って、軽く化粧をしてこざっぱりとしとる恵梨だが、寝起きの状態では隙がありすぎる。
俺はそんな恵梨を見てから、左腕の腕時計を見て、言った。
「15分、時間やるから、はよ準備してき」