第12章 〝Unlimited〟
脳無の攻撃を交わし、
男の声を聞いていたのか、脳無の後ろに回り込む。
「わざわざ、サンキュー…そういう事なら!!」
そして、力の限り、脳無を床へと叩きつけた
人間とは思えないほどの風や力を起こし、
当たりは歓喜の気持で満ち始める。
勝った…誰もがそう思っていた。
でも…彼の限界を知る少年と先程まで戦っていた彼女の想いは違っていた。
彼女は先程、かなりの力を使い、今は相澤の腕の中で動かなくなっているが、
薄れゆく意識の中で、彼女は感情が戻ったからか、どこかで分かっていたのか、
彼女は考えたのだ。彼には、もう、昔ほどの力はないのではないかと……限界があるんじゃないかと……
彼の限界を知る少年は思う。
彼はヒーローファンで毎日、ヒーロー記事を読んでいるから……
13号が立てた三本の指が
きっと、彼の活動限界だと悟る
僕だけが知っている!!オールマイトの限界を!!
そう誰もが最強を信じていた。だが、
煙が周りから消え……
彼の姿がみんなの目に晒されれば、
誰もが、顔を歪めた。
彼の下にはあの黒い霧が広がり、左脇腹には、脳無の指がかなりの深手を追わせており、
血が滴り、実に危ない状況だ。
流石に、やばいと思い相澤も加勢しようと足を戻すが、
それを優しく止める影、それは、まるで、全てを知っていたかのように悲しげで、彼の前に立っていた
「何のつもりだ…リラ……」
先程、彼の限界を察した彼女は相澤の睨みに、真っ直ぐな瞳を向けている。
「ッ……ねぇ…先生…あいつは、私に任せてよ………それに…………今行かなきゃ…多分私は後悔する………」
彼女の瞳に相澤は一瞬目を見開くと、
今度は優しく笑った。
「………わかった……行ってこい……」
「はい!……」
相澤はそう去る彼女の背中を見つめ……呟く………
「俺は……あいつの力になれてるんすかね……………椿樹さん………」