第2章 本末転倒
――曰く、先月・・・エルヴィンが喜ぶものと言ったら
ナナシ関連だと思い至ったリヴァイ達は、
ナナシに何か身につけているものをくれと言った。
だが、去年の事件があったナナシは首を縦に振らず、
どうしようかと思っていた矢先、他にも数人ナナシの私物をくれと
懇願する者が現れた。
困ったナナシが
「私の手製ではいけないのか?去年ケーキでも喜んでくれたぞ?」
という台詞を言ってしまった為、ナナシに物作りを頼んだ者は
材料費を出し、ナナシは物作りをしていたのだという・・・。
「かなりの量だったから、徹夜の日もあったんじゃねぇか?」
「・・・・・・・」
二人の話にエルヴィンは少し考え
「わかった。ナナシは私の為に頑張ってくれたんだな」と頷き、
リヴァイ達はそれに安堵したのか去って行った。
二人が去った後、エルヴィンは複雑な心境で溜息を吐いた。
皆の気持ちやナナシの頑張りなどはとても嬉しく思えるが・・・
唯一無二の存在であるナナシ本人に誕生日を
祝ってもらえないかもしれないと思うと気分が沈んでしまう。
今日少しだけでも二人きりになって、酒を飲んだりくらい
出来ないものだろうか?と、引き出しを開け
買っておいたとっておきの酒瓶を見て再び溜息を吐いた。