第2章 本末転倒
「去年はナナシさんの物を騙し討ちのような形で頂いて
プレゼントにしましたが、やはりそれは良くないと思い
・・・ナナシさんに直接頼み込んで、手作りの物を
作ってもらいました」
「何っ!?」
「去年、激怒したナナシさんが団長にプレゼントした物を
焼き払ってしまったとお聞きしましたので、
今年はきちんと形に残るようにと真っ向勝負を・・・」
エルドが補足として付け足すと、エルヴィンは満面の笑みで
感謝の言葉を口にし「開けても?」と小包に手を掛けた。
ナナシの手作りと聞いて、すぐに開けないという選択肢は
存在しない。
班員達が「どうぞ、どうぞ」と言ってくれたので、
エルヴィンは小包を開けた。
2つの小包の中には手編みと思われるセーターとマフラーが
入っており、エルヴィンはそれを手にとってまじまじ観察する。
マフラーとセーターはお揃いのように色合いが似ており、
青い毛糸に黄色の毛糸で文字や模様が編み込まれていた。
2つにはエルヴィンの頭文字の【E.S】と描かれており、
これがどれだけ時間を掛け編んだ物か窺え、
感動のあまり目頭を抑える。
「・・・なんて素晴らしい嫁なんだ」
料理上手で編み物や縫い物などの手先も器用、
おまけに床上手などと完璧過ぎて、
エルヴィンは素晴らしい人に巡り会えたと今更ながら感動した。
ここに幹部組がいたならば、
「いや、ナナシはおまえの嫁でもなんでも無いだろ!?」と
突っ込んだだろうが、生憎エルヴィンの中では
嫁に決定している為、何を言われようと揺るぎはしないだろう。
とても嬉しそうな様子のエルヴィンに安心したのか、
リヴァイ班とハンジ班は「それでは・・・」と言って退室した。
エルヴィンとしてはナナシ手編みのマフラーとセーターを
今すぐにでも身に着たかったが、流石に団長が執務中
私服でいるのはマズイだろうという事で渋々仕舞う。
手編みの物を作ってくれたナナシに、
エルヴィンは本人からの誕生日プレゼントが楽しみだと、
仕事にやる気を出し猛スピードで種類を捌いた。