第2章 本末転倒
――――夕食時、食堂で食事をしているナナシを発見したエルヴィンは、
当たり前のように彼の真正面に座り笑顔でプレゼントのお礼を言った。
「やぁ、ナナシ。私の為にセーターやマフラー刺繍入りの物を
作ってくれて本当にありがとう。とても嬉しかったよ」
「誕生日おめでとう、エルヴィン。そうか、それは良かった。
・・・すまないが、時間が無くて私からは何も・・・」
「良いんだ。君は沢山の物を作ってくれたじゃないか。
君のその気持ちが嬉しいよ」
「・・・ありがとう、エルヴィン。そう言って貰えると助かる」
ナナシはとても疲れた顔をしていて顔色も悪く、
エルヴィンは心配になった。
「大丈夫か?顔色があまり優れないようだが・・・」
「あぁ、大丈夫だ。少し・・・寝不足で・・・」
静かに食事を摂るナナシを見ながら、
エルヴィンはとても言い辛そうに話を切り出す。
「その・・・夕食が終わったら、私の部屋で飲まないか?
良い酒が手に入ったんだ」
ナナシは困ったように眉尻を下げ、「すまない」と首を横に振った。
「もう寝ようかと思っているんだ。流石にもう限界で倒れそうで・・・・」
申し訳なさそうに謝るナナシにそれ以上食い下がる事など
流石のエルヴィンも出来ず・・・食べ終わって食器を
片付けたナナシは、本当にさっさと行ってしまったのだった。