第1章 飲まず嫌い
「マリ! 助けて!」
リュカが涙目になって叫ぶ。
「マリか。いいところに来た」
ハルがソファから立ち上がりマリに近付く。
「口開けろ」
マリはハルに唇を触られ、口を開けさせられる。
「ハ、ハルさん?!」
口の中に錠剤を放り込まれた。
「水を口に含め。・・・飲むなよ」
ハルが手にしていたコップの水をマリは口に含んだ。
「リュカが頭痛いって言うから特別に調合した頭痛薬だ。・・・君が飲ませておけ」
(えっ、これ、リュカの薬なの?! 口移しってこと?!)
しゃべれなくなったマリは赤くなりながら口を押えている。
ハルはトン、とマリをリュカの方へ押し出した。
マリはポスッとリュカの隣に座る。
「早く飲まないとどんどん苦くなるからな」
ハルが退室しようとドアに向かう。
「人の好意を無にするなよ」
去り際に言って、ドアがパタンと閉まった。
「卑怯だぞ、ハル・・・」
リュカは赤くなりながら悔しげに呟いた。