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第3章 夢見たこと





ゼヴィウスは、義父の書斎の扉の前に立っていた。いつだか、エリエルに

『さらっとやってのけること』

これがバレないコツだと、アドバイスをもらったことがあった。助言に従い普段通りに扉を開け、一言だけ「失礼いたします」と言う。少々、自分の鼓動がうるさく聞こえるし、まるで、罪悪感が喉へと上がってきているような息苦しさも感じる。ポーカーフェイスで部屋に入り、普段通りに静かに扉を閉めた。途端に、ゼヴィウスの口からは無意識に安堵のため息を吐いていた。

「(…ひとまず、成功……。)」

ゼヴィウスは、額に薄っすらと噴き出た汗をハンカチで拭いながら書棚へと急いだ。小さい頃に、書斎の書棚の前で言い聞かされた記憶を辿り、本の並びを目で追う。

「(地獄については、きっととても大事なものだろうから上の方にあんのか…?)」

書棚の上の方へ首をもたげ、背表紙に記された飾り文字を目を走らせる。が、どこにもないのである。もし、義父が大切にしまい込んでいるのだとすれば…と、考えてから首を振り嫌な考えを切り替える。ゼヴィウスは書斎を見回し、部屋中に本が転がっていることに気がつく。

「(義父さん…貴重な本ばかりのはずなんだけども…。でも、あの人はズボラなんだよなぁ。)」

床にへばりついて散らばっている本を捜索していると、本棚と壁の間の隙間に本が挟まっていることに気がついた。隙間から少し飛び出ており、取り出しやすいのが救いだ。隙間は、挟まっている本の為にあるようにぴったりだった。隙間に指を差し入れ本を取り出す。少し分厚く、ボロボロだった。表紙は埃を被り、金色の飾り文字ははげかかっている。

「…" あの世について"?ありきたりな題名だな…。」

思ったより凄くなさそうである。
表紙に指を走らせると、埃が指に付着した。本を開きパラパラとページをめくる。中の紙も黄ばんでしまっていて、手書きの文字は消えかかって読めそうにない。目次と思わしきページで手を止め、文字を目で追う。

「"昔の逸話"、"地獄の地形"、"伝説"、なんだよこの本、なんでもありじゃねぇか。」

とりあえず、地獄の地形についての章を読むことにした。黄ばんだ紙をめくると、挿絵とともに注意書きが目に入った。
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