第3章 夢見たこと
「なあ、エリエル!義父様は今日はどこに出向いてるのか知ってるか?」
エリエルは目を丸くして口を開いた。
「…お前がミカエル様を探すなんて珍しいこともあるもんだな…。」
くくっと笑ったエリエルは、ゼヴィウスに顔を寄せて小声で囁いた。
「なあ、どうせ書斎にでも行くんだろ?なあ?なんでだ?」
ゼヴィウスは気持ち悪い、とすぐさまエリエルから離れた。
図星だ。
ニヤつきながらゼヴィウスを見るエリエル。その目は嫌味ったらしく光っており、口の端を片方だけ吊り上げ、なんともイライラさせられる表情だ。
「そうだ…理由は……機会があったら話してやる…。」
ボソリとゼヴィウスが言うと、エリエルは目を細め、白い歯を見せながらニッカリと笑ってみせた。そして、うやうやしく礼をしてゼヴィウスの知りたかった情報を伝えてくれた。
「ミカエル様は現在、留守にしております。坊っちゃま…ふふっ、くふふふ。」
せっかくのうやうやしい言い回しは、エリエルが己の滑稽さに可笑しくなり、吹き出したため台無しになってしまった。
「助かった。」
素っ気なく応え、早足で廊下を進んだ。ミカエルが留守にしている時の屋敷は、いつも水を打ったように静まりかえっている。今から悪い事を働こうとしているゼヴィウスの耳には、余計に自分の鼓動が聞こえてきて、緊張に拍車がかかる。少しの罪悪感に苛まれる。だが、その少しの罪悪感は、かの少女への興味と比べればアリの如しだ。