第3章 夢見たこと
「っ!?」
ゼヴィウスの手は、確かに少女を捉えたはずだったが、その手は空を切った。
目を開ければ、自室の天井が目に入る。
「(そうか、夢なんだから…触れるはずないか。)」
ゼヴィウスはため息をつきながら、上体を起こした。その後、幼少の頃よりの、日課である夢日記をつけたのだった。
「あのガキん時に、昼寝してなかったら小遣いの4分の1も飛んでかねーのにな。」
ゼヴィウスは自嘲気味に笑いながら紡いだ言葉とは裏腹に、嬉しそうに顔を綻ばせ、スマートフォンに手を伸ばした。かの少女のせいで、気持ちが高ぶっている。
__ピリリリリリ…『はぁい?もしもしぃ?ゼヴィウスからかけてくれるなんて、嬉しいわぁ。』
液晶越しに女の甘い声が聞こえる。語尾も甘く伸ばす女に、少々嫌気が刺さないでもない。
「やあ、ガールちゃん?会いたくなったんだ。声を聞くだけじゃ物足りない。君に触れたいな。」
嘘をづらづらと並べる。もちろん、女の子の名前は"ガールちゃん"ではない。ゼヴィウスは、遊んだ女の子の名前を覚えた試しがない。だから、女の子のことは"ガールちゃん"や、"君"と呼ぶ。ふだんは、寡黙で真面目そうなのだが、いつからだか、女遊びをはじめ、甘い言葉を覚えた。
『わかったわよぅ。いつもの場所で待ってるわぁ。…ふふっ、楽しみぃ〜。』
「ああ、それじゃあな。後で。」
通話を切り、スマートフォンを電源を落とし、ベッドに放り投げる。