第2章 メロキフィストという少女
_________珍しい______
誰ともわからない男の声が脳内に響いた。
その声に心地よさを覚え、メロキフィストは次の言葉を待つ。
_________待ってくれ______
次に誰かが紡いだ言葉は、酷く切なく、何かを渇望しているかのようだった。
メロキフィストは応えない。
何かを渇望する声に、鳥肌が立つ感覚を覚えた。
急に悪寒が走り、心地よさが失せていく。
(…君には応えられない。
応えることも煩わしいほどに私は眠いんだ。)
______頼むよ______
声が言う。
欲望にまみれ懇願する男の声は震えていた。
(…彼は何をこんなにも求めてるんだろう?ああ、欲望に満ちるその声は…)
______吐き気がする。
メロキフィストは、自らが呟いた言葉に驚き目を覚ました。
眠気はすっかりと消えてしまった。
(夢を見ていたはず…。)
思い出そうと、眉間に皺を寄せていると、
____________♪ ♪ ♪
スマートフォンから着信が鳴り響く。
発信者は、
「ルシファー姐さん…」
素早く画面に指を滑らせ応答する。
“ メロキフィストか?何かトラブルでもあったのかい??今日は会議のはずなんだが… ”
液晶越しに話す上司は心配そうに尋ねてきた。
「えぇえっ?!」
メロキフィストは腕時計に目を向け、自分が寝過ごしたことを悟った。
“ 珍しい、寝てたのかい?
いつもならもう、帰省している時間だったから。”
サタンがクスッと笑った。
「すみません!急いで帰る。」
“ ああ、わかっ___プツリ
メロキフィストはサタンの返事を待たず、通話を一方的に打ち切り、慌ただしく下校の用意をして教室を飛び出した。
心の中で、サタンの言った“ 珍しい ”という言葉が引っかかっていた。