第1章 1
いやいやいやいや!!
あかん!!これ以上は何も考えん方がええな!!
俺は首を振ってから自分に言い聞かせるように頷き、キッチンのテーブルに向かった。
今日のハンバーグは自信作や。
付け合わせには、ニンジンのグラッセとイモのフライ。
ソースももちろん手作りやねん。
そろそろ温め直そうか、と考えた時、ピンポーン、と待ち望んでいた玄関のチャイムが鳴り響いた。
「はーい」
ホンマは、全力疾走で玄関の鍵を開けて出迎えたかったんやけど、それで息が上がってハァハァ言っとんのも、間抜けやし。
しかもその内にデコに汗が浮かぶのも、また見映えが良いもんや無いしな。
逸る気持ちを抑えて、余裕を見せるようにゆっくりと歩いて玄関に向かう。
「どちら様ー?」
時刻は20時。
今日届く荷物も無いさかい、このドアの向こうに立っとるんは、待ちかねたあの子しかおらんはずなのに、それを悟られないようにわざと問いかける。
すると。
「あ、マネージャーの横澤です」
うぉー!!!!
来た!!来たー!!
ニヤニヤ全開、手汗と背汗多量のこの喜び。
どうにかニヤニヤを隠しながら、ゆっくりとチェーンを外し、鍵を開ける。