第14章 ライクミー
みんなが始業式に行った頃に
のろのろと起きて身支度をして
焦凍の寮部屋に向かった
昨夜は1-C寮にある私の部屋で休んだのだ
誰も居なはずの1-Aの寮に入る
「……寧々」
『爆豪くん…緑谷くんも』
共同スペースに爆豪くんと緑谷くん
2人で掃除機をかけている
『え?始業式は?もう始まってるよね』
「僕とかっちゃんは謹慎中なんだ」
へへ…と眉を八の字にして緑谷君がいう
『そうなの?!』
「うん、ちょっと派手にやっちゃって」
そういえば昨晩爆豪くんが言ってたかも…
『掃除?手伝うよ』
袖を捲りながら言う
「え!いいよ、悪いよ!」
緑谷くんは焦ったように断るが
暇だからやらせて、と頼むと
申し訳なさそうにOKしてくれた
机の上を丁寧に拭く
掃除とか、皿洗いとか、淡々とこなす家事は好きだ
何も考えなくてよくなる
「寧々」
名前を呼ばれて、顔を上げると爆豪くんだった
『ん?なに?』
「掃除終わったら、俺の部屋に来い」
『爆豪くんの部屋?』
「4階の階段から3つ目の部屋だ」
『…わかった』
頷くと、爆豪くんはまた掃除に戻った
昨日の話の続き?とかかな…
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掃除を終え、爆豪くんの部屋に向かう
『4階の…3つ目…ここか』
ドアの横に、爆豪勝己と札がかかっている
ノックをするとスグに爆豪くんがドアを開けてくれた
『お邪魔します…』
爆豪くんの部屋は男の子の割に綺麗に整頓されていた
(なんか、始めてきた気がしないなぁ…)
そう思いながらぼんやりしていると
後ろから腰に手を回され抱きしめられる
『…っ!ば、ばくごうくん…?!』
爆豪くんは、私の肩の上に額をのせて黙ったままだ
私は振り返ることも出来なくて
ただただ爆豪くんの言葉を待つ
爆豪くんは何も言わずに、首元に擦り寄ってくる
高い鼻が首筋に擦れてくすぐったい
爆豪くん、今どんな顔をしているの?
どんな思いで、こんなことしてるの?
聞きたいことは沢山あるけれど
どれも聞けないでいた
それを知ってしまったら、私はきっと揺れてしまう
だって私は、あんなに強い爆豪くんが、こんなに弱みを見せてきていることを嬉しく思ってしまってるのだから