第1章 ドントタッチミー
十分ほど走ると、問題の建物が見えてきた
自分に体力がないのを忘れていた…
何分か前に、空にヴィランらしきものが飛んでいったけど
戦いは終わったのだろうか、お兄ちゃんは無事なのだろうか
やっと建物についた時には、
中から人が運び出されている状況で
近くにいた先生の一人に声をかける
『あ、あの!』
「ん?君は?なんでこんな危ないところにいる!?」
『あの、お兄ちゃんは…
物間寧人は無事ですか?!』
「物間…?
あー、あいつはB組だろう
こいつらは全員A組だ」
『…え?』
とんだ早とちりをしてしまったと気づき、青ざめる
『あ、ごごめんなさい!』
「まぁいい、心配するのも無理はないからな
それより、ものはついでだ、手伝ってくれ」
そう言って救急箱を渡された
『はい!』
傷ついた人たちの応急処置をすることに
とはいえ、ばんそこうを貼ったり、消毒したり程度のもの
みんなボロボロだ…すごいな…同い年でヴィランと戦って
生きて帰ってくるなんて…
と思っていると
ヒジにかすり傷をしている男の人がいて声をかける
『あ、あの消毒してもいいですか?』
「あ゛?」
振り返ったその人は怒ったような表情で
『ひぅっ!えっと…怪我をされてるので消毒を…』
「あ゛?怪我だと?」
そう言って自分のヒジを睨み
「チッ、んなもん舐めときゃ治る」
『そんなのダメ!ちゃんと消毒しないと!』
うわ、怖い人なのに、つい言っちゃった…
「……」
すごく睨んでくるし、怒られる…っていうかこの人なんでヒーロー科?え、もしかしてこの人ヴィラン?
「…さっさとやれよ」
少しの間の後、返ってきたのは予想外の返事。
そしてその髪型がツンツンした赤目の人はドスンと座って、
ひじを出してきた
血が出ている所を消毒液で拭き取る
「っ!いってーな!下手くそが!」
『下手くそって…』
この人なんでこんなにイライラしてるんだろ?
でもなんか、もう怖くない…?かな
『終わりました』
「ん」
ぶっきらぼうに返事をして、立ち上がり、
私の頭をポンとたたいて去っていく
(ありがとうって意味かな?)
あんなヒーローっぽくない人もいるんだ…
と思いながらほかの負傷者を探す
すると、少し先に紅白の髪が見えた
『あ…』