第12章 リメンバーミー
緑谷「リカバリーガールの治癒でどうにかならないんですか?」
リカバリー「体は直せても、心はねぇ…
こればっかりは時間が解決するしかないのさ」
爆豪はその場に座り込み
何もない一点をみつめていた
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~轟side~
『どうぞ』
ドアのノックに寧々が答える
『焦凍、どうしたの?その顔』
「いや、何でもない」
先ほど爆豪に殴られた跡だろう
触るとヒリヒリと痛かった
『口、切れてるよ!
こっち来て、拭くから』
寧々がウェットティッシュで傷口を拭いてくれる
USJの時のことを、ふと思い出した
『綺麗な顔だから、跡が残ったら大変だもんね』
ニッコリと、あの時と同じことを言って寧々が笑いかけてくれる
そして、切れた口の端に
軽くキスをしてきた
「?!?!」
『早く治るおまじない
なんてね…はは、恥ずかし』
顔を真っ赤にして寧々が言う
そうだった、今の寧々にとって、俺は恋人なんだった
そう思うと、悪いとは思いながら喜びがこみ上げてくる
『焦凍?』
「あ、いや
なにか欲しいものあるか?買ってくる」
『ううん、大丈夫
それより、不安だから一緒にいてほしい…』
服のはしをそっと掴まれ
寧々が不安そうに上目遣いで俺を見る
好きな女が、俺を恋人だと思って甘えてくる
それは我慢できるものではなくて
思わず抱きしめてしまう
「あぁ、そばに居る」
『ありがとう、焦凍』
ぎゅっと寧々も抱きしめてきて
なんて幸せなんだろう
そして、なんて辛いんだろう
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爆豪の記憶が無い以外は体に異常もなく、
寧々は3日後退院となった
俺は寧々の退院に付き添いに来ていた
『よーし!おうち帰るぞー!』
「嬉しそうだな」
『嬉しいよ!だってなんだか凄く久しぶりだもん』
嬉しそうに笑う寧々
するりと、俺の腕に腕を絡めてきた
『早く帰ろ!』
「そうだな」
俺のことを愛しそうに見てくれるこの目は
この表情は、全て俺のものではないのに
喜んでしまう