第10章 エクスキューズミー
私の家の隣の隣
チャイムを鳴らすと、焦凍が出てきた
「来てくれたのか」
ほっとした表情を見せる焦凍
『来いって言うから…』
まだ昔のようにうまく話せない
焦凍と、こんな気まずい空気で居続けるの
辛いな…
いつものように座布団に座る
「いきなり呼び出して悪かった」
『ううん、大丈夫』
「今日呼んだのは、寧々の考えを聞こうとおもってなんだ」
『…私の考え?』
「この間は、俺が強引に決めすぎた
俺にはそういう所がある、って今日気づいてな」
「話し合わねーといけないんだよな
大切なことは」
『焦凍…』
「だから寧々の考えてること教えてくれ
何かあるんだろ?」
『うん、ある』
私はしっかりと焦凍を見て言った
『こんな気まずいの嫌だ
勝手だけど…昔みたいに焦凍と自然に話したい』
ハッキリそう伝えると、焦凍はキョトンとした顔をして
「そう、だな」
恥ずかしそうに笑ってくれた
「でも、友達に戻るのは無理だ
俺は現にまだ寧々が好きだし
爆豪から奪おうと思ってるのは変わらない」
『そこ、変わらないんだ…』
「だから、隠すのをやめる」
『え?』
「隠すから変な空気になるんじゃねぇか?
いっそ隠さず表立ってた方がいいと思うんだが」
『そしたら、焦凍は楽になる?』
「そうだな」
『なら、私は焦凍にまかせる』
「ありがとう」
焦凍が笑う顔は本当に綺麗で
つい見とれてしまう
勝己の笑った顔も好きだけど
焦凍も、いつものクールフェイスより、笑った顔の方が好きだな
話が終わり、『私晩御飯の支度あるから帰るね』と告げる
いつものように玄関先で「またね」
と振り返ると
ガタン、と音を立ててドアに押し付けられ
そのまま、唇を奪われてしまった。
『んっ!しょ、焦凍…』
「この部屋を一歩出れば、お前は爆豪の女なんだよな」
苦しそうにそう絞り出す、焦凍の表情は見えなくて…
胸を焦がすみたいに、私の左側からチリチリと火が上がった
「悪い、解除する」
そう言って触れた唇は
とても優しかった