第10章 エクスキューズミー
~轟side~
期末の演習試験が終わって、ペアだった八百万と保健室に向かうと
寧々が保健室から出てきたところに出くわした
「寧々…」
『焦凍…八百万さん…』
俺と寧々の間に少し気まずい空気が流れる
寧々とは、あの日からろくに顔を合わせていない
「治癒の個性をコピーしたって聞いたんだが」
『うん、そうなの
女の人相手だと口じゃなくても発動するみたいで』
「そうか…
林間合宿にも来れるのか?」
『いく、予定にはなってるかな
B組に付いていくけど、リカバリーはどっちにもするよ
でもあくまで、予備だから
ほとんど出番ないだろうって言われてるかな』
「そうか」
『じゃあ、私準備あるから…』
目が合わないように走り去ろうとする寧々の腕を掴む
「寧々、
今日、よかったら部屋来てくれ」
『うん、わかった…』
結局一度も目が会わないまま、去っていってしまう
八百万は見てはいけない場面に立ち会ったかのような
バツの悪い顔をしていた
「あの、わたくしがこんな事を言うべきではないのは
わかっているのですが…」
八百万が口を開く
「寧々さんは、爆豪さんとお付き合いなさってるのではなかったですか?」
その言葉がチクリと胸に刺さる
「そうだな、
でも、分かっててもどうにも気持ちが抑えられねぇから
こうやって、寧々にしがみついてる」
八百万は俯いて言葉を飲み込んだ
「俺は女心がわからなくてな…いい方法はないか?
寧々に俺をえらんでもらうための」
寧々の消えた方向をただじっと見つめる轟に
「考えて、おきますわ…」
それ以上、何も言うことは出来なかった