第9章 ヒアミー
~轟side~
「あきらめるなんて、出来るわけないだろ」
『焦凍…』
寧々が泣きそうな声でいう
男らしくないな、俺も
もう決まっていることなのに、しがみついて
でも
「ここで諦めたら、一生後悔する
初めてなんだ、人を好きになったのは…
これからも、俺が好きなのは寧々だけだ」
寧々の目に涙が溜まっていく
『でも、どうしたらいいのか…わからないっ…!』
(2人とも好きだなんて、許されるわけない)
「なら、俺の勝手にする」
『ふぇ?』
「俺が全部勝手にやっていることだから、
寧々は何も悪くない…」
『え?なにが?』
戸惑う寧々の腕を畳に押し付けるように掴み
乱暴に唇を奪った
『んっ!ん゛ーー!』
寧々は抵抗するが、解放しない
やわらかい口内に舌を這わせる
甘くてあったかくて
腕は折れそうなほど細い
何度も何度も口付けして、顔を離す
「俺は2番目でもいい
だから、このまま好きでいさせてくれ」
『ひどいよ…焦凍…』
寧々の目から涙が次々こぼれ落ちる
『これ以上、好きになるようなことしないで…つらいの』
「辛く思う必要はない
俺は、爆豪の次でいい…
寧々の傍に居たいんだ」
『焦凍なら、もっといい人に出会える
私なんかじゃなくて…「おまえがいいんだ」
強く言うと、寧々は困った顔をして
目を閉じた
『でも、私…一番とか、二番とか
そんな器用なこと出来ないよ…』
「いいんだ、俺が勝手にしてることだから」
ゆっくりと寧々の頭を撫でる
サラサラの髪が気持ちいい
ひと房掬って口付けを落とす
(悪いな、爆豪
俺は思ったより執着心が強い男だったようだ)