第52章 キスミー
2人っきりになった病室
轟はゆっくりと寧々の側に寄る。
人工呼吸器は、時折曇りながら、けれども息をしているのだと轟を安心させた。
龍の歯は、腹を貫通していたと言う
輸血をして命をつなぎとめているが、出血多量死ギリギリだったと医者が嘆いていた。
轟はいつもに増して白い手をそっと握った。
「ごめんな……寧々
お前の答えは、本当はずっと前から決まってたのかもしれねぇのに」
返事の帰ってくるはずのない言葉
それでも、伝えられずにはいられなかった。
「俺が好きになって、お前を惑わせたのわかもしれねぇ…
でも、俺は寧々を本当に愛してたんだ。
お前以外いらねぇ、お前だけに…愛されたかった。
こんなことになってもまだ……寧々が爆豪を好きだってわかってもまだ…
俺はお前が好きなんだ……
ごめんな……」
轟が言い終わって、すぐ
廊下がやけに騒がしく
開いたドアに、思わず視線を向けた。
「寧々!!!!!」
顔面を蒼白させて病室に入ってきたのは、寧々の母親
どんな顔をすればいいのかわからない。
あれだけ愛していると言っていて、
あれだけヒーローを目指していると言っていて
守れなかったものの引け目を感じる