第52章 キスミー
母親に続くように、物間寧人が飛び入り
寧々にすがりついて泣き始める。
「寧々!寧々…!
なんで、こんな……!
頼むから…目を覚ましてくれ…!」
物間の悲痛な叫びが病室に響く……
こんなに狼狽える男だったのか、
どこか、飄々としていて、世の中を舐めたようなこの男が、これほど純粋に何かを願う…
物間き握られた
寧々の指先がピクリと、跳ねた
「寧々…?寧々…!」
呼びかけると、その長く伏せられたまつげが揺れている
寧々の意識が戻ったと、母親が鳴らすナースコール。
なんども物間が寧々の名前を、必死になって呼ぶ声が、響く。
程なくして、バタバタ廊下を走る音とともに、医者が病室に駆け入ってきた。