第51章 アポロジャイズフォーミー
男の事など捨て置いて、寧々に駆け寄る爆豪。
血に塗れた体を抱き起し、その額に額を重ねた。
「なんで助けた……」
サイレンの鳴り響く中、それでもはっきりと聞こえた悲痛な声に耳に、轟は駆け寄る足を止める。
「こんな時でも……素直に礼の一つも言えねんだよ…
こんなクソみたいな俺を残して行くなや…クソ女……
勝手にいなくなりやがったら
一生恨んでやる…からな…」
「爆豪……」
轟は、それ以上前に進むことが出来なかった。
入ることができなかったのだ。
目の前に出来上がった、爆豪と、寧々の世界に……。
彼は全てを悟った。
彼女が選んだのは爆豪だったのだと。
爆豪と自分。迫ってきた龍は同じだったはず……
それでも彼女が……コピーをしなければ、無個性同然の彼女が、命をかけてまで助けに入ったのは爆豪だったのだ。
自分ではなく……。
こんなことにならなければ、気づかなかったなんて
轟は奥歯を噛み締めた。
(頼む……生きてくれ、寧々。
その不器用な男を、残して逝ってやるな)