第51章 アポロジャイズフォーミー
ショッパーが、次々にドレスを試着していく中で、最後に着たのは深紅のロングドレス。
ド背中がばっくり開いたドレスは、ラグジュアリーがドレスコードのパーティにはぴったりだった。
だが、轟と爆豪はそのドレスではなく
彼女の背中を凝視している……。
右肩から左脇腹にかけての大きな傷跡、
虎の爪で引っ掻いたようなソレは、皮膚を盛上げて生々しく白い皮膚に残っている。
「どうしたんだ…その傷…」
思わず問いかけたのは爆豪だった
ショッパーは、ん?と首を捻ると見えないはずの背中を見やって、少し笑った。
「あぁ…前ね、ヴィランにやられたんよ
広島最大の極道…椛組…。
あそこの組長がね、やり手で
相打ちでおったん、この傷。」
ショッパーは鏡で傷を確認しながら、さぞ当たり前のように話した。
隠す気がないのか、アップヘアに整えてヘアアクセサリーを選んでいく…
普通、あれほどの傷があれば、背中を隠すだろうに…
そんな、2人の思考を読んでか、ショッパーは話し始めた。
「かっこいいじゃろ?」
「あ……?」
「この傷は県民救った証なん。
じゃけ、私は隠さん
この傷見せびらかして生きていくし、
この傷ごと愛してくれる人といつか幸せになって、
結婚式には絶対ヴィヴィアンのドレス着るの。」
彼女は自称するだけあって、本当に格好がよかった。
学ぶことがこれほど多いのか、
前回、何も学べなかったと悔やんでいた爆豪は考えた。
言葉では、なんとでも言える。
綺麗事も、正しいことも。
だが、それを伝えるには、言葉ではなく、それこそ文字通り背中で語るしかないのだろう。
思えば、何度も彼女の背中に、ナンバーワンのそれを感じた。
大きさは違えど、背負うモノが大きい者は、それを抱えるだけの度量がある。
自分に足りないのは、きっと、その度量の大きさだ。
個性に頼り、オプションで戦っている。
もしも無個性だったら、今の自分は居ないだろう。
だが、ヴィランに遭遇した時、その薄っぺらな自信は白昼の元に晒される…。
己の小ささ、自己犠牲の精神の有無。
そういったものを、守られる側は見ている…
このままでは偽物だ。
強個性と、雄英のブランドで固めただけのプライドでは、ナンバーワンヒーローはおろか、愛する1人さえ、護れないだろう…。