第50章 ホールドミー
「まー…いなげな…(ややこしい)」
ショッパーは気が抜けたように呟く。
これほどのイケメン二人から言い寄られている少女とはどんな女の子なのだろう…。
雄英体育祭を見ていたり全国ニュースや、下世話な週刊誌を読んでいれば、彼らの想い人の情報は至る所に有る。
のだが、この女。
テレビはもっぱら見ないか、地元の番組「お好みワイド」一択で…。
雑誌もファッション誌以外は見ない。
実はそのファッション誌に寧々はモデルとして載っていたのだが
そのモデルがよもや目の前の2人の想い人だとは知る由もない。
2人が寧々について喧喧囂囂話しているのを聞きながら、ショッパーはスタバのプラカップをゴミ箱に投げ入れた。
「今のところ、ショートのほうが優勢ってかんじ?」
サラッと言ってのけるショッパーに、轟は驚き、爆豪は睨みつけた。
「なんでわかるんだ?」
「年の功」
「チッ…怪力ババア…」
爆豪のついた悪態に、ショッパーは爆豪を睨みつける。
「そうだ、ショッパーの個性を教えてくれねぇか?
怪力とか、パワー系の類か?」
「うん。
個性名はペイメント、まぁ要は「支払い」だよね。
使ったお金のレシートとか、明細表を破ると1万円につき1分
超パワーが使えるようになるの。
怪力って言っても、オールマイトの半分程度だけどね」
オールマイトの半分…十分すぎる怪力に、轟はふと疑問を持つ。
「そんなに強えぇのに…なんで広島なんだ?」
「地元だから」
「単純かよ」
思わず突っ込む爆豪に、ショッパーはフッと笑う。
「そりゃ、東京もいいだろうけどさ
地元ヒーローってのもなかなか楽しいわけよ」
たしかに先程から、子供や大人にかかわらず、ショッパーを見つけては手を振ってくる。
「好きなんよ、この街が
だから守りたい」
そういった彼女は、最初の印象とは打って変わって、
どこからどう見ても、ヒーローだった。