第49章 ドントストップミー
廊下を少し進んだところで轟は立ち止まると、寧々は後ろから轟に軽く追突した。
「…俺は行かねぇ」
「は?」
少し前を歩いていた爆豪も足を止めて振り返る。
『な、なんで!?行ったほうがいいよ!』
「だって、お前が1人になんだろ…こんな時に…」
「こんな時…?」
事情を知らない爆豪は首を捻るが、轟はそんな爆豪を無視して言葉を続けた。
「お前を残して行けねぇ」
寧々は、目を丸くしたまま轟を見つめたが
困ったように眉をひそめて首を横に振った。
『なんで…ダメ、ダメだよ…!
行かなきゃダメ!』
「でも…」
『でもじゃない!ダメ!!!』
その体から今まで聞いたことないほどの大きな声で否定すると、轟の腕を掴んで今にも泣きそうな顔をした。
「………」
それでも納得していない轟は、イエスもノーも言わずに黙りこくる。
その無言が、未だにインターンに行くつもりがないと証明していた。
寧々と爆豪が轟を見つめる中、轟は悔しげに顔を歪める。
「…離れたく、ねぇんだ………」
『焦凍……』
悲痛な表情に、寧々も胸を痛める。
こんなにも弱々しい轟を見るのは初めてだ。
母親の見舞いに初めて行く前日よりも、ずっと不安そうで、壊れそうだった。
だが、寧々はキッと顔を上げて轟の頬を両手で掴む。
「……?」
轟は両頬をむにっと潰された状態で首をひねった。
『行って
わたしのせいで、夢を犠牲にしないで…
ナンバーワンヒーロー、なるんでしょ?!』
「………でも、別に今じゃなくても…」
『ダメ!
っていうか、行かないなら…嫌いになるから!』
その言葉に轟は、渋々うなづいた。
寧々は、やっとホッとした表情を見せ轟に笑顔を向ける。
爆豪は、目の前で行われたそんなやりとりに、割って入ることができなかった。
目の前にまるで厚いフィールドでもあるような…
完全な二人の世界。
何も言わずに、踵を返し、寮へと急ぐ。
何が起きているのか、早く。早く。はやく
ーーーー誰か俺に教えろや…