第47章 ウォークミー
「では、今日はよろしくお願いします
取材を担当しますイルモと申します。」
イルモはショートヘアを耳にかけながら、机の上に録音機とメモを出し、ラムに向かい合って座った。
編集室の横の個室は少し薄暗い。
窓のない部屋は、唯一むき出しの蛍光灯の光が冷たく空っぽの部屋を照らしている。
「じゃあ、メールで送ってくれていた口付寧々さんの個性…テレビでもいちおう説明を拝見したけど、もう一度いいかな?」
「はい!
口付の個性は、時間無制限のコピー個性です。
個性名は『キスミー』
発動条件はキスすることです!」
「口に?ほっぺとかは?」
「口!口です。
でもそれが恥ずかしいからってヒーローになりたくないって言ってるんです。
強個性のくせに、そんな理由で人命を軽んじてるんです
さんざん色んな男とキスとか、それ以上のことしまくってるんだから、いまさら純情キャンペーンしてもぶっちゃけイタいっていうかー。」
一気にまくし立ててきたラムに、イルモは手の平を突き出して暴走を止めた。
「個性によるリバウンドは?
…つまり、上限とか、規制とか…自分の身体機能に合わない個性をコピーするとパンクしたりするんじゃない?」
「しません!
ウチの高校で強個性って言われている、爆豪勝己と轟焦凍の個性でも大丈夫なんですから!」
ラムは意気揚々と話す。
それを、イルモはメモを取りながら真剣に聞いた。
「口付さんってどんな人?性格とか…友好関係…なんでも、知ってることなら」
「あー…、学内ではいっつも腰巾着を2人引き連れてドヤ顔してます。
そいつら以外と話してるの見たことないかも。
男好きだし、嫌われてそう。
性格は、卑怯な感じです。
実は私の彼氏…寝取られて…「酷いよ」って言ったらビンタされました。」
ラムは口から出まかせばかりを呟いて、肩を落とした演技をする。
「ビンタ…!?酷いですね…そんな事をするようには見えないです」
イルモが目を丸くすると、ラムは酷いですよね!と声をあげた