第47章 ウォークミー
願ってもない展開に、轟は何も言えず、寧々を見つめる。
『…怒られちゃうかな、勝己に』
困っているような顔で寧々が呟く
轟は、寧々を後ろから抱きしめ耳元に口づけを落とした。
「…大丈夫だ、何があっても
寧々には俺がいる」
『うん……』
未だ不安そうな顔で俯く彼女にそれ以上何も言えないのが口惜しい
このまま、彼女の気持ちが爆豪から離れて欲しい
そう願うのは、ずるいだろうか。
たとえ、消去法だったとしても、俺を選んで欲しい…
『…焦凍?』
名前を呼ばれてハッとした。
目を向けると、こちらを心配そうに見ている彼女。
「…悪りぃ、どうかしたか?」
『う、ううん…ただ、なんだか…すごく辛そうだから…』
寧々に言われて自分の口元に触れる
自分は、今どんな顔をしているのだろうか
(まだ…良心が残ってるってことか…)
そのことに轟は少しほっとした。
(クソ親父見てぇには、なりたくねぇ…)
この状況は確かに、轟にとっては条件としては間違いなく優勢。
だが、寧々のことを思うと、
彼女はこれで俺を選んだとして、本当に幸せなのか不安になる。
寧々は爆豪のことも自分と同等…いやもしかしたらそれ以上に好きだったのではないか
「ヒーローになりたい、なりたくない」この論争にさえ寧々が巻き込まれなければ、こんなことにはならなかっただろう…。
全てはあの女の暴露のせいだが、そのおかげで自分もやっと優勢に立てた…。
(それでもやっぱり…許せねぇよな)
轟はもはやどんな顔だったかも忘れた縮れた金髪を思い出し顔をしかめた。