第47章 ウォークミー
「ヒーロー名ねぇ…
候補とかないの?子供の頃に考えたりしたでしょう?」
ミッドナイトは教台に立つと、腰に手を当てて問う。
寧々がヒーロー志望ではないと知らない彼女は「世間一般の普通」を彼女に押し付けた。
『…えっと……あんまり無いです…』
寧々はぎこちなく肩をすくめて、呟くように声を出す。
「んー、そうねぇ…最近の子はそうなのかしら?
轟君も、飯田君も自分の名前だったしねぇ…」
『名前でもいいんですか?
じゃあ私も……』
寧々はホッとした様子で、ヒーロー名を「寧々」にしようとした。
どうせ仮の一時的なものだ。
こっぱずかしい名前をつけるよりも、元々の名前で済むならそれがいい。
だが、ピシィ!と鞭を打つ音が教室に響き、寧々はびくっ!と体を揺らす。
「ダメ!あなたはダメ!
これから、私たちとおなじアイドルヒーローの道を辿るのに、
ヒーローネームが無いなんて言語道断よ!」
『そんな……』
寧々は半分泣きそうな顔で、プリントを握りしめる。
その表情にミッドナイトは、理由は分からずとも少し胸が痛んだが、引っ込み思案すぎるままでは寧々がヒーローになった後困るだろうと心配し、少しきつい物言いではあるが
「ヒーローネームは大切よ、自分で決めてこそ愛着が湧くものなんだから!」と言い放った。
「そうか?」
ミッドナイトの言葉に疑問を示したのは相澤だ。
静かに壁にもたれて眠っていたのかと思いきやこちらの話を聞いていたようで、首に巻いた拘束帯から顔を覗かせると、
「俺は自分で考えてないし、愛着というものもない。
所詮名前は名前だ。
突然のことでまだヒーロー像が自分の中で沸いてないなら、無理やり決めさせるのも酷だろ
お前が考えてやったらどうだ」
思いもよらない助け舟に、寧々は視線で相澤に礼を送る。
「でも……」
相澤の提案に言い淀んだミッドナイトに、
寧々も深々と頭を下げた。
『わたしからも!お願いします…』