第47章 ウォークミー
席につくと、前の席の八百万が寧々に振り返り、
「寧々さんとお近くの席になれるなんて、嬉しいですわ!私、副委員長ですから、なんでもわからないことがあったら聞いてくださいまし。」
と笑顔を作る。
『ありがとう…八百万さん』
寧々の周りには次々と、編入の祝福を伝える新しいクラスメイトたちが集まり小さな人だかりができた。
皆、寧々が同じようにヒーローを目指すことを喜ばしく思っているため、寧々が望まないような言葉をかけていく。
「でもさ、改めてすげぇよな!無制限コピーとか」
「だよねだよねー!楽しそう!わたしもそんな個性だったらなー」
寧々はただ愛想笑いを繰り返すだけ…
そんな寧々を轟は心配そうに盗み見ていた。
チャイムから1分ほど遅刻して、相澤が教室に入ってきた。
起立、姿勢、礼を済ませた後、相澤は出席確認を取る。
「爆豪は、個性解除されるまで保健室だ」
出席確認を終えたところで、相澤はそう言うと、出席簿に注いでた目を寧々に向ける。
「あと、もう気づいてんだろうが
今日から新しくクラスメイトが増えた。
口付、その場でいい、自己紹介しろ。」
『はい……』
20人の視線が向けられる中、寧々は俯きがちに一礼する。
『口付寧々…です。
よろしくお願いします』
通常自己紹介といえば、名前と個性はセットとされる。
寧々は個性を言うことなく席に着いたのだが、
クラスメイトから贈られるのは、暖かい拍手
全てを知る轟からしてみれば、その光景はとても残酷だった。